2021年未踏ジュニア感想まとめ
2021/11/03、2021年度未踏ジュニアの最終成果報告会がありました。Twitterで未踏ジュニアを知ってからもう1年経つんだな~と思っています。今年は応募して落ちましたが
去年も今年も、Twitterで発表に対するリアクション(?)をしていたのですが、今回はこんな感じでブログにまとめようと思いました。
ということでざっくりまとめていきます。ただ、時間の都合上あんまり見れてないプロジェクトもあるので、そこはご了承ください。あと、間違っている箇所があったら申し訳ないです。
VRSandbox
いきなりすごいのが来ました。
これめっちゃすごくないですか?まずレンダリングが非常に綺麗です。水の中から見る外の光がかなりロマンチックですね。質問したところUnityで開発したらしいです。
このプロジェクトは「誰でも直感的に操作できるようにする」という目標が建てられていて、それを実現するために様々な技術や手法を吟味していたのが素晴らしいポイントでした。
本命の機能である、グリッドを使って任意のオブジェクト(壁とか水とか)の設置はとても直感的だったと思います。光源も位置・明るさなど自在に配置できるのもわかりやすくてよかったです。
特によくあるメッシュ法ではなく「マーチングキューブ法」を採用したのはすごいなあと思いました。自分はこの技法に詳しくないので詳細に書くことはできないのですが、本人曰く「この方式を採用して、できるようになったことがたくさんある」とのこと。しかも最初はこのマーチングキューブ法を自作していたそう(効率が悪かったためライブラリを改造して採用したらしい)で、技術力が伺い知れます。
また、VR空間内で操作しているのを活かし、かがむと作品が原寸大になるというのはとても興味深かったです。「自分の作った作品の中に入れる」というのはロマンの塊でしょう。
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マークみっけ!for SDGs
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スライドのデザインが良くてびっくりしました。自己紹介のとこけっこう好きです。
この発表で一番凄いと思ったのは、なんと言っても画像認識精度の向上に関する努力です。最近画像処理をかじっている身としては、「マークの識別精度が低い」という問題にはうなずけます。
そこで、行われた対策は3つ。1つは画像認識のライブラリの変更で、パラメータの変更がしやすい代わりにUnityでの使用例が皆無であるTeachableMachineを、自力でUnityに実装したとのこと。めちゃくちゃすごいですね、相当な技術力がありそうです。
2つ目はモデルの最適化。ユーザーのデバイスによってカメラの画質に差があり、画像がぼやけてしまうと認識できないという問題がありました。これを解決するために、あえてぼやけた画像をモデルに取り入れることで精度が上昇したとのこと。
3つめは、そもそも最初はカメラマークを押す→マークを読み取る→どのマークが撮影されたのかを認識、というプロセスだったものを、読み込みたいマークを選ぶ→マークを読み取るというプロセスに変更したおかげで、選択肢が絞られて精度が上がったそうです。
すごいですね・・・特にライブラリのUnity実装は簡単なことではないでしょうし、読み込むマークの選択肢を狭めて精度を上げるという発想も素晴らしいです。
もちろん凄いのはここだけではな いです。このプロジェクトはUnityで開発され、Webアプリケーションとして書き出されていました。学校で配布される端末は差異があり、各OSに依存しない形で公開するためにこの方法をとったらしいです。
学校で配布される端末はたいていアプリのインストールに制限が掛けられているイメージがあるので、それを回避するという意味でもWebアプリの採用は合致していると感じました。また、初回ダウンロード以降はネット接続が要求されない仕様であり、Webアプリにありがちなデメリットも消しているのもさすがでした。マークを見つけたらいつでもどこでも撮影できるというのはプロジェクトの趣旨にあっていて良いなと思いました。
本人曰く、小学1年生の時にテレビ番組からプログラミングに興味を持ったとのこと。子ども新聞でSDGsを知り今回のプロジェクトを思いついたそうです。インプットって大事だなあと思いました。あと、絵は自作らしいです。すごすぎる。
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KillinEngine
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すげ~
もうPVの時点で凄いです
発表の最初にUnityやUE4の開発あるあるみたいなのがあって、マジで的を得てるな~と思いました。UnityのGit管理とかまったくわからないんですよね。
こちらのゲームエンジンはWebブラウザ上から動作するらしいです。Core i5 8600で安定動作、だいたい2GBくらい のRAM消費、GPU負荷は設定によって軽減できる(モザイクレベルまで画質を落とせるらしい)など、ゲームエンジンに置いて避けては通れない「重い」という要素が撤廃されてるのはもはや感動的でした。メモリ消費2GBのゲームエンジンなんてあるんだ・・・
ゲーム制作において重要な要素が直感的に操作できるなあという印象でした。マップの編集も範囲や内容がわかりやすかったです。作成したオブジェクトに対して「命を吹き込む」コマンド(命名センスがある)を用いて、ステートマシンのような形でオブジェクトの動作を設定できるという機能も非常に直感的でした。またたく間にうさぎがジャンプする機能を追加していたのが凄かったです。
また、「複数人で開発できる」というのも凄かったです。非常にリアルタイム性が高く、作業のコンフリクト(衝突)がほぼ起きなかったり、他の人がしようとしている編集も可視化されていたり・・・
最も衝撃的だったのは、デモ用のレースゲームが3時間で作られたという点です。このクォリティを3時間で作れるのヤバすぎる・・・
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こっちの某スプラのようなゲームは1時間らしいです。すごい。
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Birds eye ぴーちゃん - 自転車危険予測アプリ
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ちょうど昼食の時間だったのであんまり見れてないのですが、ただ危険を予測するだけでなく、「家族で交通安全について話し合うきっかけを作る」という視点はとても素晴らしいと思いました。
また、走行時の動画を録画するという機能がドラレコとして使える、というコメントを見て、なるほどなあと思いました。
Web個展 - Webであることを活かしたオンライン展示形式の模索
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元から「イラストレーターの支援がしたい」という気持ちがあり、その時に行ったポートフォリオ制作を通して繋がりのある人にインタビューをするというのがなんか良いな~と思いました。なんと言うんでしょうか、今までやったことが活きていると言うか・・・
イラストレーターさんの特徴を生かした設計が面白かったです。「このイラストレーターさんは色使いが素敵だから、色をテーマにしよう」と決め、例えば背景色とスライダーのグラデーションが対応しているのは良い演出だなと感じました。
そして、暗号の演出も良かったです。隠された暗号を入力することで隠された絵を見ることができる仕掛 けはとてもワクワクします。ソースコードから暗号を読まれかけた話はちょっと笑ってしまいました。
「最近あるオンライン展示は現実の再現だけど、つまりコロナが収まったら現実で済んでしまう。だから、Webらしい展示をやりたい」という目標を掲げ、それを実現するための工夫が見て取れました。
中でも一番いいと思ったのは展示終了後のページで、まさに現実の個展では再現できない、終わった後のなにもない寂しさを表現できていたと感じました。現実の個展は展示が終わればまた別の展示が始まりますからね(行ったことないので間違ってたらごめんなさい)。
それから、技術面でも工夫がされていました。絵の展示である以上、たくさんの画像読み込みは必須ですが、長いロード時間をなるべく回避するために工夫されていたのも良かったです。
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パゲット
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でけ~~
3Dプリンターのフィラメントを15個使ったらしいです。デカすぎる。
かなり高度な発表でした。ロボットはよくわからないのですが、非常に高度な技術が使われているのが見て取れました。論文を参照したり、脚をベジエ曲線で制御したり、OpenCVなどを使って物体をトラッキングしたり、3Dプリンターでうまく出力できるようにしたり、イーサネットケーブルを用いてワイヤーを 自作したり・・・かなり試行錯誤したんだなあと感じました。
設計、回路、制御、全てやっていたのがかなりすごかったですね。しかも、設計図はGitHubで公開されているそうです(MITライセンス)。
Haniwa - 家族間タスク共有&報酬提供アプリ
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最初にGoogleログインが必要と聞いて「Googleアカウントは13歳以上じゃないと登録できないのでは・・・?」と思ったのですが、どうやら子供用アカウントを作成できるらしいですね。知りませんでした(コメントで教えてもらえました)
スターを獲得したときのエフェクトめちゃくちゃ豪華でにこにこしました。スターの使いみちである報酬交換も、子どもが親に内容と消費スターを提案→親が承認、必要に応じて消費スターを編集→子どもが承認したら履歴に残る というプロセスで、子供のわがままが通るわけでもなく、また履歴に 残ることで誤魔化しづらいシステムで、工夫されているなと感じました。また、親の提示したスターに不満があれば交渉も可能らしいです。
それから、クエストの難易度設定が3段階で、そう決めた理由が「考え込まなくても直感的に決めやすいから」というような内容だったのが説得力あるな~と思いました。
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mock up: 動画編集ソフトウェアフレームワーク
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きたわね・・・
最も注目していたプロジェクトのうち一つです。まず「動画編集をかんたんにしたい」というモチベーションで、編集ソフトではなく「フレームワーク」を開発しようという発想がすごすぎますよね・・・
なんといっても、読みやすいフォーマットの中間言語によって、やろうと思えばテキストエディタで動画編集をすることができるという画期的な機能。デモも見せてもらいましたが、ファイル編集してすぐに編集が適用されていてびっくりしました。さながらホットリロードです。
この瞬間更新も努力の賜物で、GPUを仕様したことによって劇的なパフォーマンス改善ができたことに由来するそうです。すごいですね。
とにかく発想が素晴らしい、フレームワークであるため使い方によって無限の可能性を感じるプロジェクトでした。オープンソースで使いや すそうというのも良い点ですね(GPLですけど)。
>>Anyget/掲示板形式小説執筆支援ツール
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小説書いてないのでわかりませんが、かなり使い勝手のよさそうなプロジェクトでした。
このツールを使って作られた小説が以下の作品で、かなり面白かったです。週間ランキング3位らしいです。凄すぎる・・・
たしかに、こういう体系の小説を手作業で書くのは面倒そうですね。
Curepathy -子供の興味を深めるアプリ-
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「子供の頃に抱いた興味・関心は大人になっても人生に影響を与える」という主張があって、なるほどなあと感じました。
このプロジェクトで印象的なのは、3回にわたるユーザーテストを行っていたことです。各テストで受けたフィードバックを元に、使いやすいプロジェクトになるよう努力していたのが伝わりました。
Augment - リアルタイム音階推定を用いた音楽ゲーム
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この音楽ゲーム、最大の特徴が「リアルタイム音階推定」で、何が凄いのかと言うと、楽器が限定されないことです。もちろん音階推定自体も高度な技術が使われているのですが、音階による判定を採用することで、グランドピアノでもエレクトリックピアノでも同様に遊ぶことができます。それだけではなく、ギターのような鍵盤でない楽器でも遊べそうです。
コメント欄で「声で遊べるかも」というのを見て感心しました。全く思いつかなかった・・・
これ以外にも、コメント欄でいろんな遊び方が考案されていて面白かったです。
また、プロジェクト考案の動機で、類似プロジェクトとしっかり比較して、独自性を出していたのが素晴らしいと思いました。Steamで審査中らしいので、楽しみですね。
TELPort/テルポート
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まさかの自作プロトコル。発表のテンポがよく、またユーモアたっぷりだったので面白かったです。笑いながら見れました。あと、アプリのデザインが非常に良かったです。カラーパレットもしっかり決められていました。落ち着いた配色でかなり好きです。
URLが公開されているので、一度使ってみてはいかがでしょう。
特定の間隔(12乗根2と24乗根2の等比数列になるようにらしいです なんでだろう)を開けて周波数を区切り、その音域が鳴っているかいないかで0と1に変換するというわかりやすい(簡単とは言っていない)仕様で、月日が経つにつれて送信速度が向上していたのは凄いなあと思いました。最初49.2bpsだったのが半年後には1544.8bps・・・めちゃくちゃ速くなってる・・・
プロトコルの完成度も非常に高いと思いました。音で検出しているのでアプリが声にも少し反応していたのですが、それをデータとして受け取らずに無視していて、しっかりしてるなという印象を受けました。当たり前と言ったらそうかもしれませんが、プロトコルにきちんとチェックサムが含まれていていいなと思いました。これによる誤り検出率は99.98%と、非常に高いです。
シリアル通信もこんな感じのことするんですかね・・・通信よくわからないですけど(わからないことだらけ)
MacbookとiPadを用いて1000回以上実験を重ねたらしいです。すごいですね。様々な試行錯誤の元にこのプロトコルが完成したのだと伺えます。
どうやら小学5年生のとき、親に買ってもらった「暗号技術入門」を読んでプロトコル自作を夢見ていたそうです。すごい・・・
「パッと聞いて理解できないものが、実はテキストファイルだった」というのはめちゃくちゃ面白かったです。
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Researcheck -調べ学習サポートアプリ-
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「調べ学習をサポートする」という目的が非常に良いと思います。この時代、調べる力ってマジで大事ですからね。
先生から「情報の取捨選択能力を学ばせたい」というフィードバックを受けた、と聞いて確かに・・・と思いましたが、それに対応するために「非表示にするだけでなく、警告を表示するように設定できる」という機能をつけたのも柔軟だな~と感心しました。
このプロジェクトは質疑応答も印象的でした。本当は安全ではないのに「危険」だけを排除してはそれもまた中立ではないのでは?という質問には考えさせられました。
また、料金面の質問で、「Google Custom Searchは非営利団体なら無料である」というのを利用しているのも印象的でした。未踏ジュニアの利点にはこういうものも あるんだなあと思いました。
Cybotanic:サイボーグ化された植物
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これも気になっていたプロジェクトです。「サイボーグ化された植物」に興味を惹かれない人間が果たして居るのだろうか・・・?
採択期間の半年で電子工作から3Dプリンターまで学習したという紹介がありましたが、そうとは思えないほど高レベルな設計で驚きました。
「生物とコミュニケーションがとりたい!」という目標があり、「なぜ人間は植物を生きていると捉えづらいのか?」など、順番に問題を掘り下げていくのが面白く、またわかりやすかったです。「人間は考える葦である」という有名な発言を元に「これは葦が考えていないという前提の発言だ!」という主張にはちょっと納得しました。
そして、「どうやったら生きていると感じることができる?」という問いに対して、生きていることの証明になり、また生物の中で唯一コンスタントに動きが見える生体電位を用いて音楽を共演する、という発想、すごいですよね・・・どうやったらこんなの思いつくんでしょうか・・・。
使用している技術も高度でした。ユークリッドの互除法を用いて、2つの数字からリズムを導き出すアルゴリズム、Webカメラを用いてジェスチャーで演奏できる楽器「Kagura」、過去の未踏で制作されたプロジェクトを用いてKaguraとシンセサイザーのテンポを同期・・・かなりすごかったです・・・
以下は全て植物によって奏でら れたパターンらしいです。これを植物が単体で奏でているんですね・・・感慨深いです。
そして、「植物と話せるようになったら何を話したいですか?」という質問も面白かったです。回答も面白くて、「このプロジェクトを使うために日光の当たらない場所にずっと置いていたので、それをまず謝りたいです」とのことです。
自分は「植物から見て人間ってどう?」みたいなこと聞いてみたいですね(隙自語
おわりに
勢い余って6000字も書いてしまった・・・プロジェクトによって記述量に差異があるのは申し訳ないです。
去年はもちろん、今年も本当に斬新で面白いプロジェクトばかりで、楽しませてもらいました。本当にありがとうございました。
来年は・・・採択される側に回りたいです・・・最後だし・・・
採択されなかったらとりあえずU22の時みたいに反省記事を書こうと思いますが、こういう記事をまた書くかどうかはわからないです。
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